012 65%の都市伝説

「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」という有名な予言をご存知でしょうか?

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予言と言っても、うさんくさいものではなく、ニューヨーク市立大学教授であるキャシー・デビッドソンさんが、2011年8月にニューヨークタイムズ紙のインタビューに答えたものとされています。

これは、けっこういろんなところで引用されています。たとえば、

産業競争力会議 雇用・人材・教育WG(第4回)の文部科学省提出資料(平成27年2月17日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/wg/koyou/dai4/siryou2.pdf

文部科学省の中央教育審議会(初等中等教育分科会)配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364310.htm

などなど、検索すればいっぱい出てきます。すでに既定事実であるかの如しです。

ところが、不思議なことに、検索すればわかりますが、一次情報が見あたりません。キャシー・デビッドソンさんのこの記事とか、このレポートとか、この論文といった、情報の元となるソースがありません。私と同じ疑問を持った人が他にもいて、調査をされています。
https://hereandnow704.blogspot.jp/2015/07/0085-150730-65.html

結論は、「ソースが見あたらず」です。もしかすると、都市伝説の類かも知れません。ソースのわからない情報を次々と引用して広めていく。そういえば、どなたもソースを示しての引用ではありません。べつに、都市伝説だからダメだとか、ウソだとか言うわけではありません。こんなにも引用されるのは、その内容が現実に即しているとふつうに思われるからでしょう。

ざっと計算すると、2011+16=2027年ごろのことでしょうか。シンギュラリティより18年前になります。

この引用とは別に、人工知能やロボットが、現在の仕事をかなり人間から奪うことになると、いろんな方が予測、というか、確実に起きる近未来へ言及しています。ならば、2027年の65%は不思議でも何でもありません。とうぜん、そうなんだろうと思える予測です。(根拠がどうであろうと)

コンピュータの特性からして、答えのある仕事はコンピュータが早々に人間から取り上げるでしょう。答えのある仕事とは、誰がやっても同じであるような仕事です。肉体労働であろうと知的労働であろうと変わりません。たとえば、超知的労働と思われている弁護士業務でも、そのうちの9割程度は調査であり、この部分は人工知能でもできそうだ、という話を聞いたことがあります。9割かどうかはともかく、どんな仕事でも、他人に任せることのできる部分は、「他人」でなく人工知能かロボットに任せたほうがすぐれているということになっていくでしょう。

そうすると、2011年時点の職業のうち、65%は消え、別の仕事に置き換えられることになる、という話は非常に信憑性が高いと言っていいでしょう。いやいや、65%どころではないかもしれません。人工知能やロボットではできない仕事は、2011年時点の職業のうち、35%もありそうには思えません。

もっとも、シンギュラリティでは、2045年には人類は労働から解放されるとのことで、職業そのものがなくなるとのこと。人類史上、人類が労働から解放されたことなどないので、イメージ困難です。労働は、生きる糧を稼ぐというだけでなく、社会参画、自己実現などの意味もあり、それをなくすと人間として生きている意味がなくなります。だから、労働はなくなっても、いろんな活動は残っていくでしょう。

しかし、社会参画や自己実現であっても、人工知能やロボットができることは無意味でしょう。

人工知能やロボットにできないことは何か。

答えのない命題ではないでしょうか。

人文社会系のジャンル、歴史、文学、哲学を中心とした、「人間の存在や精神」にかかわる部分は、おそらく、人工知能やロボットが最後まで苦手とするでしょう。人によって答えがまちまちとなる感情や感性もそうかもしれませんが、人工知能が脳を徹底的に解析すれば、人間を感動させる芸術を人工知能が創り出すことも不可能ではないようです。現実を上回るバーチャル体験を提供できるそうです。

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どうも、凡人である私が一生懸命考えて考えて、人工知能やロボットに侵されない領域は、「人間の存在や精神」にかかわることしか思いつきません。先ほどふれた弁護士業務でも、最後に残るのは、訴状を作成する部分でしょうか。まさに「人間の存在や精神」にかかわることです。

現在、テクノロジーを開発するために、理数系の知識がそうとう必要とされています。もしかすると、シンギュラリティ以降は、人工知能が開発を進めていくとなると、理数系すら不要となるのではないでしょうか。もしそうなると、逆に人類の存亡の危機ですね。
 

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