教育の階段とエレベーター

わが家はホームスクーリング3年目です。なるべく強制しないで勉強させようという、矛盾をどうするか、日々悩んで葛藤しています。
ハルは、読み書きそろばんはボチボチです。本は大好きで、かなり難しい本でも、どんどん自分で読んでいます。木工作、紙工作、電気工作、粘土、料理、お菓子作り、自然観察など大好きです。工夫や創意は強い関心を示します。かたや、足し算、引き算、かけ算、割り算、漢字、作文はあまりやりたがりません。
計算や漢字は、反復学習の積み重ねによって習得していくと一般に考えられており、私もそのことに異論はありませんが、反復学習の大事さをハルに言うと、ブルーになってしまいます。いつのまにか、ハルは、「自分は勉強が遅れている」と思いこみつつあるようです。昨日、そう気づいたパパは、ハルに語りました。

教育のカテゴリー

どんなに貧しい人でも、どう勉強させたらいいか親がわからなくても、親が忙しすぎて子どもにかまってやれなくても、親が勉強に関心がなくても、学校は、すべての子に最低限の勉強を与えてくれる。日本では、障害のある人をのぞけば、おとなになって、5+8ができない人はいない。ひらがなやカタカナを読み書きできない人もいない。山、川といった漢字を読めない人もいない。これは素晴らしいことだ。学校教育はとても素晴らしい。障害のある人、特別な事情のある人で、レベル2に届かない人もいる。そういう人を社会全体で支えていかないといけないのはいうまでもない。

世の中には、月へロケットを飛ばし、人間を着陸させるような人もいる。この人たちは、どうやって勉強したんだろう? 学校教育だけで、ここまでできるだろうか?
(ここでハルは表情が変わります)

学校教育は、階段を登るようなものだ。1段ずつ、「みんな、ついてきたか~。よーし次いくぞ~」と、みんなで登っていく。だから、どんな子でも、レベル2までは行くことができる。学校へ行っている子の中に、勉強が得意な子と苦手な子がいるので、だんだん差がついてくる。学校の終点は大学だ。順調にいけば22歳で学校教育を終える。これがレベル3だ。学校教育の最高がレベル3だ。学校教育を受けた人は、学歴にかかわらず、レベル2とレベル3の間、カテゴリー2にいる。会社勤めの人、役所勤めの人、自営業、職人など、ほとんどの人がここにいる。22歳と言えば、大人だ。ここで社会に出る。

ところが、ロケットを飛ばす人たちは、それよりはるかに難しい仕事をしている。これがレベル4だ。レベル4には、学校教育の階段では登ることができない。学校教育を終える22歳ごろ、カテゴリー3の人たちは、すでにレベル4にいる。生まれつき天才だとか、特殊な才能があるとか、必ずしもそうではない。この人たちは、階段とは別のルート、すなわちエレベーターをもっているのだ。親や先生が子どもにプレゼントしたのではなく、自分の中にエレベーターを設備したのだ。

このエレベーターは、おそらくほとんどの人が希望すれば持つことができる。今の日本の学校教育は、階段を登ることに一生懸命になりすぎて、エレベーターどころではなくなってしまった。他の国々の学校教育は必ずしもそうではない。階段を基本にしつつ、エレベーターも作っている国もある。
エレベーターとは、何のことか、わかるか?

(ここで、ハルは表情がいっそう明るくなりました)
「自分で考えること!」

そう、それも大事だ。自分で考えるためには、たくさん本を読まないといけない。そして、考えたことを何かに応用していかないといけない。つまり、エレベーターの基本は3つだ。
1.本をたくさん読む
2.自分で考える
3.自分で何かを作る

(ここでハルの表情が明るく全開!)

なんてことはないほど、ふつうのことだ。ハルにとっては。こんなことなら大好きだし、いくらでもできるだろう。これがエレベーターの正体なのだ。もっとも、エレベーターそのものはもっと高度な構造をしているが、基本はこの3つだ。

しかし、日本の今の学校教育では、この3つができない。本を「読ませる」のではいけない。子ども自身が夢中になってとめどなく本を読んでいってこそ意味がある。自分で考えるには、あまり教えてはいけないし、じっと待ってやらないといけない。自分で何かを作るには、材料をいくらでも与えないといけないし、逆に完成品を与えるのはよくないし、失敗をさせてやらないといけないし、子どもがじっくり取り組めるだけの時間をたっぷり与えてやらないといけないし、大人は辛抱強く見守ってやらないといけない。

本来、学校教育とエレベーターは相容れないものではない。日本でも、以前は学校教育をうけつつ、エレベーターを育てることもできたが、今はなかなか困難だ。カテゴリー3の人たちが新しい時代をつくり、カテゴリー2の人たちが、世の中を動かしていく。どちらも大事な役目だ。今の日本は、カテゴリー3が枯渇している。だから、急速に国の力が落ちていっている。

エレベーターをもっていれば、短時間で高く登ることが、いくらでもできる。ハルには、エレベーターがある。何も心配することはない。これからもエレベーターを育てていきなさい。

ホームスクーリングとは、エレベーターを育てることに他ならない。学校教育を受けたほとんどの人はカテゴリー2で暮らしている。指示されたことを一生懸命務めていく。それも大事な仕事だ。尊い仕事だ。しかし、これからの世の中は厳しい。強く生きていくには、レベル4の実力を身につけて欲しい。もちろん、ロケットが全てではない。自分で考え、自分でつくり出す仕事の全てがここに当てはまる。仕事だけではなく、人生の全てがそうだ。自分で考え、自分でつくり出すことは、自分で人生を歩くことにほかならない。ハルが何を考え、何を作っていくか。親が決めることではない。親は、エレベーターを育ててやるだけだ。

ハルに、「23+36は?」と聞いてみました。暗算です。だいぶ考えて、答えが出ました。「10の位どうし、1の位どうし、それぞれ足して、繰り上がりを考えればよい」とアドバイスすると、とたんに「99+99」なども簡単にできるようになりました。これがエレベーターだと思っています。

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